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まず最初に「マーケティング」というものをどういうふうに考えるのかというところからお話させていただきたいと思います。みなさんは日頃、商品であったりサービスであったりをお客さんに対して売っておられると思いますが、あらためて自分の会社は何を売っているのか、逆にお客さんから見ると何を買っているのかという、基本中の基本となるこのあたりから話をして起こしていきたいと思います。
本日ここに来られている方々の会社名を見ますと、その商品は生命保険であったり住宅であったりと様々ですが、「うちは何々生命保険会社です」とか「何々住宅に勤めています」と言う時、これは商品の側に立って物事を考えているわけですね。これとは違って、お客さんがモノを買うのは、商品それ自体がほしいからではなく、それを使用したり所有したりすることを通じて得られる満足であるとか、価値を買っているんだという考え方が、マーケティングの発想のエッセンスなんです。売っている商品やサービスをそれ自体から捉えるか、ニーズから捉えるかということは大きな違いが出てくるんです。
その違いについてよく引き合いに出されるのが、「あなたは直径3ミリのドリルを買いましたが、あなたの欲しかったものはなんですか?」といった質問です。価値とか満足とかのニーズから考えれば、ドリルではないことは気が付かれるはずです。答えは「穴」ですね。欲しかったのはドリルの開けてくれる穴であって、ドリルそのものではないというのがマーケティングの考え方なんです。化粧品はどうでしょう?これも化粧品そのものではなく「美しさ」という価値なんです。同様に自動車は「走るプライバシー」、写真フィルムは「思い出」や「記念」、といった具合に、どんな商品にもこの考え方はあてはまります。皆さんが会社や家庭でお使いのコンピュータはどうでしょう。企画管理とか売上管理をするニーズ、問題解決のためのニーズがあるからコンピュータを使うわけで、コンピュータそれ自体が欲しいわけではない。IBMという会社の経営理念は昔から“IBM means service”「IBMはサービスという意味です」というもので、つまりIBMはコンピュータメーカーであるとは一言もいってなくて、サービス、今で言うとソリューション(問題解決)サービスを提供しているんだと言うことで、これはまさにマーケティングの発想に基づいた経営理念と言えるでしょう。
販売というコンセプトとマーケティングというコンセプトの違いを見ていきます。従来の販売は、作ったものをどうやって売り込むのかがコンセプトです。よく「product-out」と言われます。効率良く低コストで出来上がった製品を、さまざまな販売促進の手段によって売り込んでいき、その結果として目指すのは販売量による利益です。これに対しマーケティングのコンセプトは、売れるものをいかに作っていくか。「market-in」の発想ですね。その出発点はまず誰に売るのかといった標的市場、ターゲットから考えます。その顧客のどのようなニーズを満たそうとするのか。そのニーズを満たすためにはどんな商品、サービスを提供すればいいかを見つけだす。どれくらいの価格を考え、どういうプロモーションで、どのチャネルを通して消費者に届けるのかといったことをその後で調整していきます。その結果は顧客満足による利益です。ドラッカーは「マーケッティングは販売を不要にする」と言っています。マーケティングという考え方に基づいてきちんと作られた商品は、努力して売り込まなくてもお客さんのほうから寄ってくるというんですね。この発想の違いによるコンセプトの違いは大きいものがあると思います。
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