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イベントログ

2003年 第5回ビジネス交流会セミナー

「5つの力」を考えてみる
 次に差別化ですが、差別化は継続しなくてはいけません。ベンチャー企業(または新製品)が差別化要因を作ることができ、ある程度うまくいきそうになったということは、市場で認知されてきたわけですから、今度は持続的に、スパイラルで競争要因を考えていかなければなりません。その時“五つの力“フレームワークを使って考えてみるといいでしょう。このフレームワークは、特に小さい会社が、新しいことを新規参入する場合にはとても使いやすい考え方なんですね。ベンチャーというのは攻めるのは強いけど守るのは弱い。その守る時にどういう考えていくかというのが、「5つの力」で現されるのがこのフレームワークなんです。まず一つは自分のいる業界内競合、次は売り手、自動車業界であれば鉄板ですとかね。3番目は買い手、後は自分の商品の代替品と、新規参入、この「5つの力」を考えるんです。それぞれ利益に関わってきますが、新規参入や業界内の競争が激しい、代替品があったり、あるいは買い手が強いと価格を下げる圧力になります。売り手が強い時は価格が上がる。どれもこれも収益、利益にプレッシャーを掛けてくる要素なんです。これがつい忘れがちになってしまう。
私が以前いた会社の失敗例なんですが、ついこの前までインターネットつなぎっ放しの電話料金は10000円くらいでした。お客さんとしてはそれは当たり前だと思っていました。そこに「ソフトバンク」は「ヤフーBB」という新システムで新規参入していったわけです。新規参入の立場から業界を見ると、市場は大きいし固まっている。「ヤフー」というブランドはけっこう大きいし、ここに半額以下で、当時3000円くらいでしたが、その料金で入っていけたら、お客を獲得できると考えたわけです。確かにそれは正解でサービスをアナウンスしたとたん何十万人という申し込みが殺到しました。しかし結果としては、「電話料金は交渉できるし、選択できるんだ」というふうにお客さん側が目覚めてしまった。それに売り手のサプライヤーも、「いろんな出し方があるんだ」というふうに変わってきました。一番読み違えたのは競争状態で、NTTも料金を下げてくるし、光ファイバーの業界からも新規に市場に参入してきちゃうというわけで、「ヤフーBB」として自分も1プレーヤーになった業界は、いっきに戦国時代を呈し、広告費など、最初考えていたより何倍もコストのかかることになってしまいました。今から考えると、その時さっきの5つの力というフレームで考えてみたら、ここがこう変わればここがこうなるといったように想定できて、もうすこちがうアプローチがあったはずじゃないかと思うわけです。ぜひ新しいことをする時は、いろんな要素がいっぱいあると考えにくいんで、このぐらい単純に、先の「5つの力」で区分けして考えていただくと解りやすいのでないでしょうか。
 もうひとつ誤解されやすいものに「ブランド」があります。「ブランド」は必ずしも消費財の「シャネル」とか「ルイヴィトン」とかいうときにだけ考えればよいものではなく、どんな企業も「ブランド」を意識しなくちゃいけないですね。ブランドの定義は「お客さんとの約束」だと言われています。自社のターゲットとなるお客さんが、自社のイメージがすぐわくか、他との違いをはっきりいえるかが、「ブランド」と単なる商品名との違いなんです
 「ブランド」の条件は以下の5つです。「他の競合と一目見て区別できる」「品質が安定している」「他の競合との差別性あるいは優位性がはっきりとある」「ターゲットとする顧客の多くが商品名を知っている」。あとこれは強いブランドの条件になるんですが、「経験してないターゲット顧客でもその商品の特徴を知っていること」。値段のプレミアムと言っていますが、同じ品質の消費材でも、「ブランド」があると、30倍の値段がつくことがあります。最近解ったんですが、法人に向けての産業材でも、「ブランド」があると15%から30%の値段の差がつきます。ですからブランドを意識してがんばっていきたいですね。
 それからお金が出がちなのが広告宣伝、コミュニケーションの部分ですが、ここのコツをひとつお話しておきます。よく最終的な目標を設定しないでプロモーションや広告をする方が多いんですが、結果として売上をこのぐらいまでいかせようというふうに、はっきりと数値目標を最初に作っておかなくてはいけません。多くの企業では、製品原価などはきっちりコスト削減してても、この広告宣伝部門ではかなり無駄打ちしていることが多いですね。
 当たり前のことですが、広告代理店に対しては、その結果として何がしたいんだということを必ず伝えておかなくてはいけません。広告代理店にヒアリングしてみたんですが、お客さんに「この広告をした結果として現状と比較してこういうものを求めているんだ」と具体的に数字にまで落とし込んで言われるのは10社に1社だそうです。たいていの場合こういうとこにこういう広告といった、方向性だけは言われるんだそうですが、最後の目標値を言われることはめったにないそうです。意外ときちんとそういう依頼をすると、対応してくれることは多いですし、それができない広告代理店なら代えたほうがいいんです。やったらやりっぱなしではなく、もちろん終わった後でのその結果の事後評価をきちんとする。特にコストの出やすい部分なので、最終結果の目標値を決め、「これを達成するための広告戦略を考えてください」という形で広告代理店とは付き合っていくことだと思います。
 最後にわれわれベンチャーキャピタル側がどんな視点で企業を見ているかにちょっと触れておきます。銀行の融資との違いは、われわれの投資は未来に賭けているんで担保の評価で意思決定をしていないということです。損益計算書や貸借対照表、担保だけで評価はしていません(もちろん決算書類はよく見てはいますが)。過去ではなく未来を見ていると申しましたが、ひとつだけ見ている過去は、その経営者がどういう約束の守り方をしてきたかという点を見ています。過去に立てたビジネスプランをどのくらい達成してきたかということをすごく見ているんですよ。それによって「今この人の言っていることはどのくらい信用できそうかな」というのを判断します。これは第一前提でして、次にビジネスプランの方は何を見ていくかと言うと「市場がどのくらいのスピードでどのぐらいまで大きくなるか?」ということ。それから「大きくなる市場でなんで勝ち続けられるのか?」「どんな理由でどのくらい儲かるのか?」、「そのビジネスプランをマネージできる、組織や人材構成があるのか?」などといった点です。
 もちろんベンチャーキャピタルから投資を受けようとしているステージの企業が、これらが全部あるわけないんです。その場合は「今何が不足していて、どう補完しょうとしているのか?それが補強されるとどのくらいのメリットがあるのか?」ということをどのくらいはっきり考えているかを見ることになります。われわれはお金だけではなく、人を探すことをお手伝いすることもありますし、ビジネスプランの「マーケティング」部門が弱ければ、一緒にプロモーション戦略を創っていくとかもするわけです。経営者の方が、「何が足りなくてどこをどう補強しようとしているのか」というアイディアがないとどうしょうもない。
 この全体のストーリー付けに大事なのが、一環して「マーケティング」、最後にお客さんがいるかどうか?ということになります。これらに説得力を持たせるための理由付けとして、「マーケティング」という視点から、今日前段からずっとお話してきましたようなことがあると、われわれとしては説得されやすいということになるわけです。
 その意味でも、今日のお話がみなさんの企業のこれからに、少しでも参考になれば幸いと思います。このへんで終わらせていただきます。

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